長期優良住宅とは?
『長期優良住宅』をご存じでしょうか?
この制度は2009年に始まった「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいて作られた住宅のことです。
この法律は
家の質を高めて、長い間良い状態で使える家を増やすこと
にあります。
要するに『長持ちする家を作ろう』という取り組みです。
日本の家は他の国と比べて比較的短命と言われています。
戦後の住宅需要の急増に対応するために、短期間で大量に作られた家が多かったという背景があります。
その結果、早く老朽化してしまうことが多く、建て替えが必要になるケースが多発。
そこで登場したのが長期優良住宅。長期間にわたって良好な状態を維持できるように設計・施工されていて、住む人の生活の質を高めることを目指しています。
また、長期優良住宅は、長期にわたり良好な状態で使用するために、大きく分けて以下のような措置が講じられています。
認定基準
長期優良住宅として認定されるには、いくつかの基準をクリアしないといけませんが、わかりやすい項目についてご紹介させていただきます。
①耐久性・劣化対策
まず、家の構造や設備が少なくとも100年は使えるようになっている必要があります。
具体的には、以下のような対策が取られています。
- 構造材の品質管理:使う木材や鉄骨は、耐久性の高いものを選んで、しっかりと防腐処理や防虫処理を施します。例えば、木材には防腐剤をしっかり浸透させたり、鉄骨には防錆塗料を塗ったりします。さらに、使用する材料は厳しい品質基準をクリアしたものでなければなりません。定期的な品質検査を行い、劣化の兆候がないかを確認します。
- 基礎工事の強化:建物の基礎部分には、高耐久性のコンクリートを使って、適切な配筋計画を立てています。地盤調査を行い、その結果に基づいて基礎の形式(べた基礎、布基礎など)を決めます。また、コンクリート打設後は十分な養生期間を確保し、基礎の強度を最大限に高めることが重要です。
- 外壁や屋根の防水対策:外壁や屋根には、高耐久性の防水材や塗装を使って、雨水の侵入を防ぎます。具体的には、外壁には透湿防水シートを貼り、屋根には防水シートや瓦を使います。これに加えて、定期的な点検とメンテナンスを行い、防水性能の劣化を防ぎます。
- 適切な換気計画:室内の湿気を効果的に排出するための換気計画を立てて、カビや腐食を防ぎます。例えば、24時間換気システムを導入して、室内の空気を常に入れ替えるようにしています。また、換気口やダクトの定期的な清掃も欠かせません。
② 耐震性
日本は地震が多い国ですから、耐震性はとても重要です。
震度6強から7程度の地震に対しても、倒れたり壊れたりしない構造が求められます。
具体的には、以下のような対策が取られています。
- 耐震等級の確保:建物全体の耐震性を評価するために、耐震等級1から3までの基準があります。長期優良住宅は、耐震等級2以上をクリアしなければなりません。耐震等級2は、建築基準法の1.25倍の地震力に耐え、耐震等級3はその1.5倍の地震力に耐えることができます。また、建物の耐震診断を定期的に行い、必要な補強工事を実施します。
- 制震・免震装置の導入:必要に応じて、制震装置や免震装置を導入して、地震時の揺れを軽減する工夫をしています。制震装置は建物内部に設置して、地震のエネルギーを吸収して揺れを抑えます。免震装置は建物の基礎部分に設置して、地震の揺れを建物全体に伝えないようにします。これにより、建物内の家具や設備の転倒・破損を防ぎます。
- 耐力壁の配置:建物のバランスを考慮して、適切な位置に耐力壁を配置することで、地震時の倒壊リスクを低減します。耐力壁は、建物の構造において水平力を分散させる役割を果たし、建物全体の剛性を高めます。設計段階での耐力壁の配置計画は非常に重要であり、シミュレーションを行って最適な配置を決定します。
- 壁量計算による耐震等級3の見直し:2022年10月1日から、壁量計算による耐震等級3の見直しが開始されています。これにより、より精度の高い耐震性能評価が可能となり、安全性が一層向上しています。
- 許容応力度計算による構造計算書:3階建ての建物では構造計算が義務化されています。2階建てでも任意ですが、構造計算を行うことで耐震性能の確保が求められています。
③維持管理・更新の容易性
家は長く住むものですから、維持管理が簡単でなければなりません。
主要な構造部材や設備の点検や交換が容易にできる設計が求められます。
具体的には、以下のような設計が行われます。
- メンテナンススペースの確保:設備や配管の点検や交換が容易に行えるように、メンテナンススペースを確保します。例えば、床下や天井裏には十分なスペースを設けて、点検口を設置します。これにより、点検や修理がしやすくなり、建物の寿命を延ばすことができます。
- 点検口の設置:床下や天井裏など、普段は見えない部分にも点検口を設けて、定期的な点検が可能です。これにより、家の劣化状況を把握しやすくなり、必要なメンテナンスをタイムリーに行うことができます。さらに、点検の際には、専門家による詳細な診断を受けることが推奨されます。
- 維持保全の計画:長期優良住宅の認定を受けるためには、維持保全の計画を作成し、所管行政庁に提出する必要があります。計画には、点検やメンテナンスの内容、頻度、実施方法が具体的に記載されます。
④可変性
家族構成やライフスタイルの変化に対応できるように、内部の間取り変更が簡単にできることが求められます。
具体的には、以下のような設計が行われます。
- フレキシブルな間取り:将来的に部屋の増減や用途変更がしやすいように、間仕切り壁が簡単に取り外せる構造になっています。例えば、軽量鉄骨やパーティションウォールを使用して、簡単に部屋のレイアウトを変更できます。また、収納スペースの移動や増設がしやすい設計も取り入れられています。
- 配線・配管の可変性:電気配線や給排水配管が、将来的な間取り変更に対応できるように柔軟に設置されています。例えば、床下や天井裏にスペースを設けて、配線・配管の経路を変更しやすくしています。これにより、リフォーム時の工事が簡単になり、費用を抑えることができます。
- 大開口の確保:大きな開口部を持つことで、室内のレイアウト変更が容易になります。例えば、リビングとダイニングを一体化させるための大きなスライドドアや可動壁を設置して、柔軟な空間利用が可能です。これにより、家族のライフスタイルに合わせて空間を自由にアレンジできます。
⑤バリアフリー性
高齢者や小さなお子様をはじめ、誰しもが暮らしやすい設計が求められます。
具体的には、以下のような設計が行われます。
- 段差のない設計:玄関や室内の床には段差がなく、車椅子や歩行補助具の使用が容易です。例えば、玄関にはスロープを設け、室内の各部屋の入り口には段差をなくすようにします。さらに、バリアフリー設計の一環として、床材には滑りにくい素材を使用します。
- 広い廊下とドア:廊下やドアの幅を広くして、車椅子の通行がスムーズに行えるようにします。具体的には、廊下の幅を最低でも90cm以上、ドアの幅を80cm以上にします。また、車椅子の回転スペースを確保するために、角の部分を丸くするなどの工夫も行われます。
- 手すりの設置:トイレや浴室、階段などには手すりを設置して、高齢者や障害者の移動をサポートします。手すりの設置位置や高さは、使用者の体格や利用シーンに合わせて調整します。さらに、手すりの材質は握りやすく、滑りにくいものを選びます。
⑥省エネルギー性
家は、エネルギー効率が高くて環境に優しいものであるべきです。
断熱性能や設備のエネルギー効率が高く、環境負荷を低減する設計が求められます。
具体的には、以下のような対策が取られます。
- 高断熱材の使用:外壁や屋根、床には高断熱材を使用して、熱の損失を最小限に抑えます。例えば、断熱性能の高いグラスウールや発泡プラスチック断熱材を使って、外気との温度差を減らします。これにより、冷暖房の効率が向上し、エネルギー消費が削減されます。
- 高性能サッシの採用:窓には高性能なサッシや複層ガラスを使用して、冷暖房効率を高めます。具体的には、アルミと樹脂の複合サッシや、Low-Eガラスを使用して断熱性能を向上させます。また、サッシの気密性を高めることで、室内の温度変化を抑え、快適な環境を維持します。
- 省エネルギー設備の導入:高効率なエアコンや給湯器、照明器具など、省エネルギー性能の高い設備を導入します。例えば、高効率のエアコンやエコキュート(ヒートポンプ給湯器)、LED照明などを使用してエネルギー消費を抑えます。さらに、省エネルギー性能を最大限に発揮するために、設備の配置や運用方法も工夫されています。
- 再生可能エネルギーの利用:太陽光発電システムや蓄電池の導入により、再生可能エネルギーを積極的に利用します。例えば、太陽光パネルを設置して自家発電した電力を蓄電池に貯めて、家庭内で利用することでエネルギー自給率を高めます。これにより、電力の外部依存を減らし、持続可能なエネルギー利用が可能になります。
- 省エネルギー基準の見直し:2022年10月1日から、省エネルギー基準の見直しが開始され、より厳格な基準が導入されています。これにより、住宅の省エネルギー性能がさらに向上し、環境負荷の低減が期待されています。
認定のメリット
長期優良住宅として認定されると、住宅取得者や所有者にはさまざまなメリットがあります。
具体的には、以下のようなメリットがあります。
①税制優遇
長期優良住宅の認定を受けると、住宅ローン減税や固定資産税の減額など、さまざまな税制上の優遇措置を受けることができます。
具体的には、以下のような優遇があります。
- 住宅ローン減税:長期優良住宅の認定を受けた住宅を購入した場合、住宅ローン減税の控除額が増加します。例えば、一般の住宅に比べて控除期間が延長されるなどの優遇があります。これにより、住宅購入時の経済的負担が軽減され、長期的な資産形成がしやすくなります。
- 固定資産税の減額:長期優良住宅の認定を受けた住宅については、新築後一定期間、固定資産税が減額されます。一般の住宅よりも減額率が高く設定されているため、経済的な負担が軽減されます。具体的には、新築後3年間、固定資産税が1/2に軽減されるなどの措置が取られる場合があります。また、一部の自治体では、追加の減税措置が提供されることもあります。
- 不動産取得税の減額:長期優良住宅の認定を受けた住宅については、不動産取得税の控除額が増加します。具体的には、一般住宅の控除額が1200万円であるのに対し、長期優良住宅では1300万円の控除が受けられます。
- 登録免許税の軽減:長期優良住宅の認定を受けた住宅については、登録免許税の税率が引き下げられます。具体的には、保存登記で0.1%、移転登記で一戸建て0.2%、マンション0.1%の軽減が受けられます。
②補助金・融資制度
長期優良住宅の建築に対しては、国や地方自治体からの補助金や低金利の融資制度が利用できる場合があります。
これにより、初期投資の負担を軽減し、質の高い住宅を手に入れることが容易になります。
具体的には、以下のような制度があります。
- 国の補助金制度:国土交通省や経済産業省などが提供する補助金制度を利用することで、長期優良住宅の建築費用の一部を補助してもらうことができます。例えば、「住まい給付金」や「長期優良住宅補助金」などが該当します。これにより、建築費用の一部が補助され、経済的な負担が大幅に軽減されます。
- 地方自治体の支援制度:各地方自治体によっては、地域独自の補助金や融資制度が用意されている場合があり、これを活用することでさらにお得に長期優良住宅を建築することができます。例えば、都道府県や市町村が実施する「エコ住宅補助金」や「耐震補助金」などが該当します。これにより、地域の特性に合わせた支援を受けることができます。
③資産価値の向上
高い性能を持つ住宅であることから、市場価値が高まりやすく、将来的な売却時にも有利になります。具体的には、以下のようなメリットがあります。
- 高評価の維持:長期優良住宅は、耐久性や省エネルギー性が高く評価されるため、資産価値が維持されやすい傾向があります。また、定期的なメンテナンスを行うことで、長期間にわたって良好な状態を保つことができ、資産価値の低下を防ぐことができます。さらに、長期的に見ても資産価値が下がりにくい点が魅力です。
- 売却時の優位性:将来的に住宅を売却する際に、長期優良住宅であることがアピールポイントとなり、他の住宅と比較して高値で売却しやすくなります。例えば、不動産仲介業者や購入希望者に対して、長期優良住宅の認定書を提示することで、住宅の高性能を証明することができます。これにより、購入希望者に対して安心感を与え、売却がスムーズに進む可能性が高まります。
④住み心地の向上
耐震性や断熱性、省エネルギー性能が高いため、快適で安全な生活が送れるだけでなく、光熱費の削減にもつながります。具体的には、以下のようなメリットがあります。
- 快適な室内環境:高断熱・高気密の設計により、冬は暖かく、夏は涼しい快適な室内環境を実現します。また、24時間換気システムの導入により、常に新鮮な空気が供給され、健康的な住環境が保たれます。これにより、季節を問わず快適に過ごすことができます。
- 光熱費の削減:高効率な設備や再生可能エネルギーの利用により、光熱費の削減が期待できます。例えば、太陽光発電システムを導入することで、電力の自給自足が可能となり、電気代の削減が実現します。また、高断熱材や高性能サッシの効果により、冷暖房費も抑えることができます。
- 安全性の向上:耐震性の高い住宅であるため、大地震が発生した際にも安心して暮らすことができます。また、防犯性能も高められており、窓やドアには防犯対策が施され、セキュリティシステムが導入されています。これにより、家族全員が安心して暮らせる環境が整います。
⑤維持保全の容易さ
長期優良住宅は、長期にわたり良好な状態で使用するために、計画的な維持保全が求められます。このため、住宅の維持管理が容易であり、定期的な点検やメンテナンスがスムーズに行えます。これにより、住宅の劣化を防ぎ、長期間にわたって快適な住環境を維持することができます。
長期優良住宅の3つのデメリット
長期優良住宅の購入では、デメリットについても十分に考慮しましょう。
①長期優良住宅の認定を受けるために時間・手数料がかかる
長期優良住宅の申請は、着工前に行わなければなりません。申請の手続きは、所定の手順を踏む必要があるため、時間がかかる点に注意が必要です。また、申請では申請先の所管行政庁や状況によって異なる手数料が発生します。
②一般住宅より建設費が高くなる可能性がある
長期優良住宅の認定を受けるためには、高い耐震性能や省エネルギー性能の充実、劣化対策などが必要です。長期優良住宅に適した設計や、良品質な材料の使用などが理由となり、一般住宅に比べ建設費が高くなる可能性があります。
③入居後も定期点検・メンテナンスが必要
長期優良住宅の工事が完了し、入居後も認定を受け続けるためには、維持保全計画に従った定期点検やメンテナンスが必要です。維持保全計画による定期点検では、住宅の維持保全が必要な期間は30年以上、点検時期の間隔は10年以内などと定められています。住宅の維持保全を怠る、改善命令に違反するなどした場合は、長期優良住宅の認定の取り消しや、補助金や優遇を受けていた税金の返還を求められることがあります。
長期優良住宅を検討するときのポイントは?
長期優良住宅は、一般住宅より建築費が高くなる、入居後のメンテナンスに手間がかかるなどの可能性があるため、費用対効果が得られずに後悔する場合があります。そのため、長期優良住宅の認定は、将来の生活も見据えて十分に考慮したうえで決定しなければなりません。
また、長期優良住宅の認定を受ける場合は、実績のある工務店や住宅会社の選択が重要です。長期優良住宅の実績があれば、建築における技術力の高さや、長期優良住宅の手続きについての豊富な知識が期待できます。
長期優良住宅は、日本の住宅ストックの質を向上させ、持続可能な社会の実現に寄与する重要な取り組みです。高い耐久性、耐震性、省エネルギー性などを兼ね備えた住宅は、住む人々に安心と快適さを提供し、社会全体の住環境を向上させることができます。これからも、国や地方自治体、住宅メーカー、消費者が一体となって長期優良住宅の普及に取り組み、より良い住環境の実現を目指していくことが求められます。持続可能な社会の実現に向けて、長期優良住宅の重要性はますます増していくことでしょう。
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